2010年05月17日

世の中の半分は平均以下。

映画『川の底からこんにちは』を観てきた。

今年に入って『食堂かたつむり』・『カケラ』と満島ひかりが出ている映画は網羅してきたのだが、この『川の底からこんにちは』は中々突き抜けていて観ていてとても気持ちが良かった。

満島は一応「元アイドル」という括りで大筋間違っていないはずなのだが、諸々の映画作品の中で演じている「垢抜けない女性の役」「ダメ女役」がハマりすぎている。『カケラ』ではそれこそ気の毒なくらいに。

そんな満島ひかりの魅力を最大限に活かして撮られたこの『川の底からこんにちは』なのだが、コメディ映画のような外観をとりながら要所要所で痛烈に人間社会のつらさ・厳しさをえぐってくる作りで飽きない。

「どうせ私もあなたも"中の下"で大した人間ではない。それはしょうがない。だから、頑張らなきゃ。」

そういうメッセージをあっさり言えてしまうのは、まさに今この時代の映画なのだからだろう。
かつてこの国には「一億総中流」という時代があったようだが、どうも最近そうではないらしいと人々は実感しているのである。
そして個々人も「特別なオンリーワン」ではなくて、所詮どこにでもいる「中の下」程度の存在らしい、とそろそろ認めなくてはならない。取り敢えずそれを認めないことには何も始まらない。

佐和子(満島)が幼稚園児の加代子に「あんたなんか大した人間じゃないんだから頑張れ」と言って幼稚園に送り出すシーンは実に心に染みる。誰もが本当は分かっていることなのに言葉にはできない、敢えてしない、そんなことをずばっと言ってくれているのがこの映画。
それはまあ、人間の半分は「平均以下」の存在であることは自明なのだが、普通は自分が「平均以下」であることは気づかないし、気づいても認めないのである。
しかし、映画の表現を借りれば、実は「中の下であることは恥ずかしいことではない」、そして開き直って「頑張る」しかないのである。


何をどう頑張るのかは不明、というか人それぞれなのだが、「中の下の意地」を見せるためにとにかく頑張る、そんな勇気を与えてくれる良い映画である。


今年これまでのところ観てきた中では、これとか「ボーイズ・オン・ザ・ラン」が好き。
何だかもう、「カッコいい映画」とか「オシャレな映画」は要らないのかもしれない。

さて、来週はいよいよ新劇場版ヱヴァのBDが来る。昨年劇場で2回観たけれど、やはりもう何回も観たい。
そして仮面ライダー映画三連発ね…。正直、電王はもうお腹いっぱいなのだけれど。

2010年03月01日

いま一度問う― 君は、生きのびることができるか?

『機動戦士ガンダムUC』
プレミアレビューという形で、初日に観てきた。

3月中にはビデオが発売されるので大したプレミア感もないのだが、
映画館で観るというのも悪くない体験である。
実質はガンダムのOVA展開に過ぎないはずなのだが、「映画」というフォーマットで観ても何ら違和感はなかった。

僕の中のガンダム史は、アムロがアクシズを地球圏から押出し、
TMネットワークの「BEYOND THE TIME」が流れるところで止まっていた。

シーブックやウッソの話がいくら宇宙世紀だと言っても、
もはやシャアやアムロの鼓動が聞こえない舞台には完全には心がときめかなかった。

(その中で「閃光のハサウェイ」が好きなのは、やはりそこにファーストやΖとの繋がりが感じられるからなのかもしれない。)

「逆襲のシャア」から22年が経った事になるが、ガンダム・ユニコーンは止まっていた時計を再度動かしてくれた。
小説やマンガでの展開があったとしても、やはりアニメーションはまた格別なのである。

今年の僕の課題の一つは、「ちゃんとガンダムする」である。
30周年だった去年は、お台場のあれを見に行ったりとか、仕事でいくらか絡みがあったりとか、それなりに印象的なこともあったのだが、
いまいち全力でガンダムできていなかった。

2010年こそは素晴らしいガンダムyearにするぞ、とユニコーンに誓う。

エピソード1の出来はトータルでなかなか良かった。
秋発表のエピソード2にも大いに期待。
全6話構成らしいのだが、完結編はいつになるのやら。
(今回のクヲリティなら、いつまでも待てるが)

それにしてもユニコーンは、キャラクターが安彦氏だったり、MS原案が大河原氏だったりと、
僕らオールドファンには「ああ、ガンダムが帰ってきたんだな…」と思わせる布陣である。

「いま一度問う― 君は、生きのびることができるか?」
このキャッチには心底痺れる。

2010年02月20日

2009年 シネマ・レビュー

キネマ旬報のレビューが出たわけだが、そんな権威は全く無視しつつ、2009年の個人的な総決算を出してみる。


【2009年 マフティー・セレクション】

1. 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

序の公開から、二年ぶりの続編。
新生エヴァ劇場版の最新作。毎度これだけのクヲリティで出してくれるのなら、二年というウェイティングタイムも気にならない。

ずっとエヴァを観ていて良かったと心底思わせてくれる出来。
『序』では旧作からの大きな物語の変更はなかったが、この『破』においてはそのタイトル通り、大幅な物語の再構築が図られている。
それにしても、10数年という永きにわたって人々の間に浸透している『エヴァンゲリオン』の物語をこうも大胆にアレンジして少しの破綻も見せないというのは一種の奇跡とも言える。
ここまでの制作陣の熱の入りよう、ファンならずとも心して今後の展開を見守るべし。

そして、完結してから観ればいいや、と思っているそこのあなた。
まだ今なら、歴史的大作を自分の時間軸と同時代的に語れるチャンス。


2. 『ディア・ドクター』

『ゆれる』の西川美和の監督・脚本最新作。
この人の映画は本当にいつも期待と安心を持って観ることが出来る。

灰汁の強い鶴瓶のキャラクターを巧く捌いたところも特筆。


3. 『フィッシュストーリー』

伊坂幸太郎の原作作品は今年全て網羅したが、個人的には『重力ピエロ』よりこちらのほうが評価が高い。


4. 『サマーウォーズ』

『時をかける少女』の細田守監督+マッドハウスが送るアニメーションムービー。
『時かけ』と比べてどうだという議論はさておき、作品としては十分に傑作の域。


5. 『空気人形』

『誰も知らない』の是枝監督作品。
『リンダ・リンダ・リンダ』のペ・ドゥナ主演。
非常に美しい映画。
後半の「問題シーン」には勿論賛否両論あるかもしれないが、
トータルで清々しい気持ちにさせてくれる不思議。


6. 『おと・な・り』

岡田准一 x 麻生久美子の恋愛映画。
『ニライカナイからの手紙』『虹の女神 -Rainbow Song』の熊澤尚人監督作品。僕がこの方に期待するのは、ひたすら「岩井俊二っぽさ」なのだが、これは岩井路線を踏襲しつつも、恋愛映画の古典的展開がなんとか嫌みにならない程度で悪くない。
『ハルフウェイ』のぐだぐだ感も悪くないが、比較するならこちらか。

久しぶりに観た恋愛映画だったが、赤面モノでとても心温まる作品だった。アラサー男女は必見というところで。

それにしても2009年は麻生久美子の年(映画だと、『おとなり』、『インスタント沼』、『ウルトラミラクルラブストーリー』、『罪とか罰とか』、そしてサッポロビールのテレビCM・・・)だったと改めて感慨深い。
その中でも敢えてこの『おと・な・り』が麻生久美子的に一番良かったと推したい。


7.『わたし出すわ』

『間宮兄弟』の森田芳光作品。
小雪、主演。
公開規模も小さかったし、あまり話題にも上らなかったけれど、個人的には結構ツボだった。
演出が物語に対して中立的というか、非常に淡々としている。
若くして大金を持った女性が、周囲の人々に各の夢を叶えさせるために資金援助をしていくという突飛なストーリーに小雪の外見も相まって、映画的な非日常感・神秘性に溢れている。
北海道の美しい景色も印象的。


8.『南極料理人』

堺雅人主演。
フードスタイリストが『かもめ食堂』の飯島奈美ということで話題になった作品。食べ物をどうしてこうも美味しそうに表現できるのだろうかと感心しつつ、人間生活の基本には食があるのだなと改めて納得させられる。
地味だけれど心が暖まる良い映画である。そして出演者が男性ばっかりのむさ苦しい映画でもある。


9. 『悪夢のエレベーター』

佐津川愛美が良い。
『腑抜けども悲しみの愛を叫べ』でヒロイン佐藤江梨子の妹役、というよりはガスパッチョのCMのバスガイドっぽい人といったほうがピンとくるだろうか。


10.『大阪ハムレット』

様々な問題を抱える実に面倒くさい家族の物語である。
特筆すべきは一家の末弟役の大塚智哉の鮮やかな演技だろうか。


【次点】

『パンドラの匣』
どうも芥川の作品というのはナルシズムに溢れていて心の底から共感というわけにはいかない。個人的には、『ヴィヨンの妻』よりもこちらのほうが好き。

『僕らのワンダフルデイズ』
竹中直人が嫌いでなければ。ストレートで良い映画。

『鴨川ホルモー』
割と好き。山田孝之と石田卓也の掛け合いが実に馬鹿っぽくて笑える。そして相変わらず栗山千明が素敵。

『重力ピエロ』
「俺たちは最強の家族だ。」悪くない。
ただ、伊坂作品ということでは『フィッシュストーリー』を勧める。

『ヴィヨンの妻』
広末は見ておこう。


【2009年の個人的な佳作】

『アサルトガールズ』
押井先生、これはこれでやりたいこと・撮りたいものがはっきりしていてむしろ良かった。

『罪とか罰とか』
成海璃子の現状把握(特に体型とか体重とか)に大いに役立つ映画。

『ハルフウェイ』
10代の幼稚な恋愛と、北乃きいと、岩井俊二っぽい画を堪能できる映画。

『インスタント沼』
麻生久美子の女優力を改めて実感出来る映画。三木聡の映画では一番好きかも。

『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』
小池徹平主演のアイドル映画化と思いきや、IT業界のデフレスパイラルをそれとなく描いた共感できる映画。

『宇宙戦艦ヤマト』
今度のヤマトは六連発。
なんと、波動砲六連発。
物語として、映画として、最初から最後まで破綻している。
しかし、そこはヤマト。
全てを許させる圧倒的な作品力。
もう、ヤマト再浮上のシーンは号泣必至。

『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』
2009年は地味に平成仮面ライダー10周年の節目の年。
『仮面ライダーディケイド』はTV版最終話で物語が完結せず、「続きは映画で…」というプロモーションをやってしまい、クレームが殺到。挙句、テレビ朝日の社長が放送倫理の観点から謝罪コメントを出したという話もあった。

まぁ、いずれにしても映画の出来もひどかった。
どうも仮面ライダーの映画はやっつけ感というか商業感が強くて面白くない。その中でもなかなか面白かった電王の映画シリーズはさすがという他無いのだが。


【2009年の地雷】

地雷というからには、それが問題作であることに気づかずに踏んでしまうくらいの勢いが必要なのだが、
09年において、そこまでトラップ的な作品はなかったような。

『誰も守ってくれない』
二度見る気もないが、後半はやはり破綻しているような気がする。


【まとめ】

12月の中頃にようやく目標の「年間50本@映画館」を達成し、なんとか安堵。
09年の映画ライフは割と充実。
エヴァは期待を裏切らないクヲリティだったし、細田守や西川美和の新作も出た。
そして最近の邦画の鉄板である伊坂幸太郎原作の映画もたくさん公開され、麻生久美子や堺雅人といった贔屓の俳優のパフォーマンスも非常に高かった。
劇場視聴を敬遠した『愛のむきだし』を2010年の宿題として残してはいるのだが。

ガンダム30周年、平成仮面ライダー10周年、そうして'00年代も終局。

2009年01月13日

2008年 シネマ・レビュー

独断と偏見と屈折した嗜好による、2008年公開邦画の総決算。
結局2008年、映画館で観賞できたのは40本程度に留まった。
年間50本@映画館、にすら届かないのはもう仕方ないわけで、
今後はそもそも身の丈にあった目標設定が必要なのかもしれない。
観賞本数の少なさが災いしたのか、そもそも外れ年だった為かは定かではないが、
こと映画に関しては2008年は自分にとってまさに消化不良の年だった。


以下順不同で、2008年、大なり小なり心に染みた10本。


【2008年 マフティー・セレクション】

1. 『アフタースクール』

内田けんじ監督作品。
やはりこれかと言われそうだが、やはりこれ。
映画不況の中、気を吐いた一本。
質の高い笑いと切なさとを存分に提供してくれる作品。
映画館での満足度がとても高かったし、もう一度見返したいと思えた。
セル・レンタルともにDVDリリース済み。まだの人は取り敢えず観るべし。


2. 『百万円と苦虫女』

タナダユキ監督作品。
とにかく蒼井優に尽きる。
2008年、一番綺麗だと思った女優+作品。

ラストシーンのシュールさは心に突き刺さる。
タナダユキ作品は他に『俺たちに明日はないッス』を観たが、こちらもそつない仕事ぶり。個人的には今気になる監督の一人。

『百万円と苦虫女』も映像ソースがリリース間近。
解りやすい作品かと思うので、観賞候補にどうぞ。
とにかく蒼井優が本当に美しい。


3. 『ザ・マジックアワー』

やはりこれは挙げておくべきか。
大ヒットした三谷映画で、多くを語る必要もないかと。
丁寧な映画作りには脱帽。
安心して笑いに没頭できる良作。


4. 『ぐるりのこと。』

橋口亮輔監督。
木村多江、リリー・フランキー主演。
様々な困難を乗り越える夫婦愛を正面から描いた硬派で骨太な作品。
重たいので、気軽にもう一度観るという気にもならないのだが、
抑えておくと良いかと。


5. 『おくりびと』

滝田洋二郎監督作品。
本木雅弘主演。
モントリオール国際映画祭グランプリ受賞で、
ご承知置きの通り、かなり話題になった作品。

美しい自然の映像と日本伝統の様式美が堪能できる。
憎らしいほど本木雅弘が二枚目。


6. 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』

押井守監督作品。
派手さもお得意の衒学もなく、これといって盛り上がらなかった押井作品。
ちょうど魚の子と同じ公開時期で完全に陰に隠れた形。

押井信者的には不満が残る向きもあろうが、たまにこういう作品も有りかも。

イノセンスでいうところの映像美とはまた違った形の美しさを堪能できる作品。
アニメーション映画の空の青さに感動できるのもこの作品くらいか。

映画館で観てから幾分時間が経った今、ビデオがリリースされたらもう一度観たいと思っている。
今日歩く道は昨日歩いた道とは違う、ということで。


7. 『イキガミ』

成海璃子、松田翔太、山田孝之出演。
原作は同タイトルの漫画。

オーソドックスな泣かせ映画なのだが、
脚本は悪くなく、役者の演技の質も高い。
お約束だが、「24時間後にあなたは死にます」そう告げられたとき、残された時間で何をするのか、考えながら観てみるのもありかと。


8. 『うた魂♪』

田中誠監督作品。
夏帆主演。
矢口監督の『ハッピーフライト』は期待していた路線とは違ったのだが、
こちらはかなりストレートな高校生青春映画。
ライトな作品だが、毎年一本はこういう作品を観たい。

尾崎豊のお馴染みのメロディに彩られた音楽コメディ。
こうやって聴き返してみると、尾崎豊の曲は良いなと改めて思うわけである。


9. 『トウキョウソナタ』

黒沢清監督作品。
『グーグーだって猫である』も然り、小泉今日子出演作品は結構安定している。
そして、駄目親父をやらせたら香川照之は一級品。
近年の黒沢清節は幾分控え気味の作品。


10. 『天国はまだ遠く』

長澤雅彦監督作品
加藤ローサの美しさに目を見張る。

今までの彼女の出演映画の中でも(大した本数はないが)、おそらく最高のフィルム映り。ファンなら必見。
長澤監督の真骨頂、素晴らしい仕事をしている。

そして徳井の顔の造形の綺麗さも特筆すべき。
お笑いタレントがあのルックスだと、役者も商売あがったりだ。

物語は、都会の生活に疲れ切ったOLが自殺を思い立って田舎の民宿を訪れ・・・といったお約束感満点の切り出し。
しかし、奇をてらうことなく淡々と紡がれる物語は、淡い恋愛映画というより、もっとリアルで硬質な現実を描いていた気がする。

携帯電話も届かない桃源郷なんて今の日本にはそうそうないし、人里離れた山奥にしても、自動車という文明の利器をもってすれば、普通の現代社会の居住エリアなのだ。



【次点】

『青い鳥』

素晴らしき低予算映画。
阿部寛、本郷奏多、伊藤歩、それでも役者の存在感だけで映画は成り立つ。

学校のいじめをテーマにした物語。
重松清原作の映画はどうにも重苦しいわけではあるが、
一見の価値はある。


【2008年の個人的な佳作】

『攻殻機動隊 Ghost in the Shell 2.0』

リメイク作品なので選外としたが、
押井ファン、攻殻機動隊ファンなら是非。


『ひぐらしのなく頃に』

メディアミックスの権化、その映画版。
山里で起こる不可解な殺人事件を巡る物語。

カテゴライズとしては今時の普通のホラーorサスペンス映画なわけだが、何となく次が気になる。

赤い、熱い。
そして何だかむせ返るようなエロスを感じる作品。


【2008年の地雷】

『チームバチスタの栄光』 

前評判ばかり高く、というか前振りだけは大袈裟で、
中身はまるで伴わず。
それなりにヒットしている分、タチが悪い。


『リアル鬼ごっこ』

原作の世界観を活かし切れず、どこまでも陳腐な作り。
谷村美月、石田卓也、前途有望な彼らにもっとまともな仕事を与えてやってほしい。


【まとめ】

こうやって一年を振り返ってみて、出会った映画をまとめてみる。
単館系の映画をずらっと並べたほうが、見た目的には本物っぽくて良いのだが、今やこれが限界。
駄目、全然駄目、自分。

それでも寛大な皆様方に、今後のビデオ鑑賞の参考の一つとしてもらえれば幸いである。

さて、2008年は新宿ピカデリーがリニューアルし、都心に馬鹿でかいシネコンが誕生した。こことバルト9を合わせると随分な数の映画をシネコンでやっているわけで、映画の梯子をする側からすれば随分助かっている。
なんだかんだでシネコンは便利。新宿ピカデリーにはかなりお世話になった。
去年の春先に引越をして、新宿・渋谷へのアクセシビリティは格段に向上した。地理的メリットを活かしてベストを尽くしたい2009年・・・。

2008年11月24日

11月に咲いたシンビジウム

「墓場まで持っていけんものは、抱え込まんことに決めたのでな」

攻殻機動隊SAC Solid State Society, 荒巻公安九課長


肌寒くなる秋は、一年で最も人をセンチメンタルにさせる時期。
取り留めもなく考えることは、変えられない過去のことだったり、定まらない未来のことだったり。

久しぶりに袖を通した長袖のシャツの胸ポケットから、映画の半券が出てきた。

『ストロベリーショートケイクス』
2006年11月4日、10:30開映、渋谷シネアミューズ。

2年もの間、こんなところに入っていたとは不思議だが、
その間おそらく一度もこのシャツを着なかったというのも奇妙なものだ。
そして出てきたのがよりによってこの映画というのもどことなく皮肉な気がしてならない。

僕は物持ちの良さだけは他人に自慢できる。
もちろんそれは整理が出来ないことの裏返しなのだが。

そういうわけで、まだここで触れていない邦画について一言ずつ記録しておく。


■スカイ・クロラ

押井守監督久々の新作。
割と万人に受け入れられる余地のある、どちらかと言えば分かりやすい内容のアニメーション。

"もう一度、生まれてきたいと思う?"

その問いに対する答えを僕は持ち合わせてはいない。
けれども、「たとえ同じように見えたとしても、昨日歩く道は今日歩く道とは違う。」、そんな言葉を信じて、変わり映えのない日々でも精一杯生きていくのである。

今さら思い返してみても、とても綺麗な映画だった。

押井信者の恨み節は、とりあえず聞こえない振りをしておく。


■ジャージの二人

捻りはないが悪くはない。
暑い夏に観たい避暑映画。

堺雅人は好きな役者。
『ココニイルコト』以来、親しみを持って見ている。
今年は『アフタースクール』での好演が記憶に新しい。


■ネコナデ

子猫萌え。
大杉蓮扮する鬼人事部長が可愛い子猫と出会って人生を踏み外していくという、割にシュールな物語。
誰も萌えには逆らえない。
"かわいい"は正義なのだろう。

コーヒーでも飲みながらのんびり観ると良いだろう。


■闇の子供達

今年最大の地雷の予感がしたが、案の定だった。
「人身売買、生体臓器移植、幼児虐待・・・」というセンセーショナルなテーマの原作に乗っかった商業映画。
原作にないオリジナルなエンディングは、はっきり言って、余計。

パスして正解。


■TOKYO!

ミシェル・ゴンドリーら三人の外国人監督が観た東京を描くオムニバス、三本立て。
けれども、雰囲気はどちらかというとマイナー邦画。

個人的にはいまいち共感できない内容だった。


■グーグーだって猫である

最大の問題点は、それが猫映画ではないという点にある。
流行りの "Around 40"モノという評価には頷ける。
決して悪い映画ではないが、動物モノを期待するなら期待外れ。

小泉今日子、私生活ではいつも騒がしいけれど、
四十にして惑わず、本業でのその存在感は確かである。


■20世紀少年

言わずと知れた三部作の第一部。

この続きをあと二本観なければならないと考えると、気分は沈む。
エンターテイメント作品としてはこれで十分だろうが、原作を読んだ方は敢えて手を出す必要はない。


■おくりびと

外国からの評判が高いのも頷ける、純和風の美しい映画。
観客動員数、うん百万人突破!なんてテレビCMで言ってはいる。
内容は分かりやすいが、実際は万人受けするタイプの映画ではない。
本木雅弘のチェロの演奏シーンが悔しいほど格好良いので、そこも必見。

何はともあれとりあえず、お勧め。


■アキレスと亀

北野武の世間への恨み辛みが凝縮された映画だと思う。
従来の北野作品より分かりやすい内容だが、僕にはイマイチだった。
これなら、ヒットしなかったTakeshi'sの方が余程良い。


■イキガミ

結論から言うと、結構良い映画。
成海璃子、松田翔太、山田孝之、と質の高い演技を見せている。
脚本もまずまず。
「18-24歳の間に一定数の国民が死ぬ。死亡予定者には死の24時間以内に死亡予告書『イキガミ』が届けられる。」

非常にセンセーショナルな設定。
こういう突飛な設定を持つ映画というのは、往々にして失敗しがちなのだが、
この作品は、上記の設定に甘んずることなく物語を紡いでいる。
イキガミが届く人物が映画では3人登場するのだが、その3人の物語がバラエティー豊かで、面白い。

ラストは結論を放り投げた消化不良な形だったが、
続編への布石とすればそれも可か。


■レッドクリフ part1.

なぜ観に行ったのかというと、それは単に僕が三国志好きだから。
ジョン・ウー×三国志、ということで、中身は三国無双かと思ったが、意外に普通な戦闘シーンだった。

長坂橋の張飛仁王立ちもないし、趙雲の阿斗救出シーンも割と現実的な描写。
一方で、倒れた敵兵に複数の兵士が一斉に槍を突き立てるというえげつない戦争描写は、おそらく日本人監督だと撮らないだろうといった感じ。

物語は劉備軍が新野から敗走する場面から話が始まるので、三国志のバックグラウンドがないと、なかなかのめり込みづらかったり、あるいは数の多い登場人物をフォローしきれないかもしれない。

赤壁にスポットが当たっていて、呉と周瑜にフォーカスしている。
ちなみに曹操については、二喬萌えではなく、小喬萌えの設定。

関羽が曹操の客将として過ごしていたエピソード、官渡の戦いでのエピソードも説明していないので、赤壁で曹操軍が敗退した後の流れはどうするのかと心配にもなる。
黄蓋の「苦肉の策」も次作品ではあるはずだが、Part1.では黄蓋は一瞬しか登場しない。

想像していたよりも戦争シーンの時間的ボリュームが少ないので、若干虚をつかれた感じ。全体としては、割とそつない仕上がりになってはいるので、三国志好きなら適宜突っ込みながら観ても良いのでは。


■ICHI

勝がつき、北野がこねし座頭市、座りしままに食うは綾瀬・・・。

ピンポンの曽利文彦が撮る「座頭市」。
台詞は現代風なのだが、ロケも設定はばっちり時代劇。

VFXは想像よりも随分と控え気味で、ピンポンのペコ(窪塚洋介)のように市(綾瀬はるか)が宙を舞うわけではない。どちらかというと正当派の殺陣、古風な戦闘シーン。
そして、やたらと綾瀬のアップが多い確信的アイドル映画。

「同じにおいがする」と思っている人もいるかもしれないが、
あずみシリーズほど無茶苦茶ではないのでご安心を。

盲目の市を「女性」と設定したことで、その悲劇性は倍増する。
とは言え、脚本はベタで、お定まりの恋愛要素が中心にどっかりと腰を据える。
胸の空く痛快チャンバラ劇を期待すると肩すかし。
市の抜刀術をもっと観たかったのだが。

一方で綾瀬はるかが邦画界で着実にポジションを築きつつあることを、再確認させられる作品。
つまらない作品ではないので、選択肢に困ったら観てみるのも悪くない。


■トウキョウソナタ

巷での評判が割と高い。
実際、面白かった。

しかしながら、やはり僕は黒澤清監督の映画が不得手である。
時に炸裂する黒澤節に、唐突に取り残される。
どうも監督の言語感覚に素直に共感できないときがある。

とは言え、『LOFT』や『叫』と比べれば遙かに解りやすい映画である。
観て損はない。

(主人公ファミリーのロケーションは目黒の駒場か。)



・・・さて、先日は矢口史靖監督の『HAPPY FLIGHT』を観賞したのだが、どちらかというとパニックムービー風で意外だった。
年末は例年ほとんど映画館に行けないのだが、今年はもう少しだけ観賞作品を積みたいところ。

そろそろ師走の足音が聞こえるが、今年は本当に忙しかったなと顧みる。
おそらくは何年経って振り返っても、きっと人生の転機だったと位置づけるに違いない。とは言っても今の場所も単なるステップに過ぎない。
夢を見るだけならもちろんタダだが、夢にトライするぐらでもとりあえずはタダだ。
花はいつ咲いたとしても、それが遅すぎるということはないと信じたい。